挨拶 ページ29
**
「じゃあ、出発します。」
横と後ろから聞こえる『お願いしまーす。』の声を合図に、ゆっくりとアクセルを踏む。
『…すっげぇ、意外。』
隣で目を丸くする目黒くんに笑いながら、目的地へと向かう。
ーー
ー
りっちゃんとコンビニで飲み物を買い、外に出ると目黒くんと向井さんがじゃんけんをしていた。
〔何のじゃんけん〕
『今日の運転手じゃんけん。勝ったほうが運転するんだってー』
二人の横にいたラウール君にりっちゃんが話しかけると、素直にそう返すラウールくん。
(いつ仲良くなったんだ。)
りっちゃんのコミュ力の高さに感心していると、そんな彼女が私に向けて片眉を上げる。
言いたいことが分かったから、こちらも同じように返す。
未だにあいこを続ける二人に近寄り、グーを差し出す。
『わー！Aさんの勝ちだ！』
『『え？』』
「さっ！行きましょうか？」
驚いた顔をする二人を置いて運転席に座る。
ラウール君とりっちゃんはすぐに後部座席に乗り込む。
すぐに敗者の二人から運転手変更の申し出が合ったが、
りっちゃんが行った〔Aの愛車もミニバンだよ。〕の言葉で結局折れ、大人しく席に座ってくれた。
ーーー
ー
車を走らせて数時間。気づけば自然豊かな場所へと入ってきた。
さっきまで盛り上がっていた車内がいつの間にか静かになっており、バックミラーに映る後部座席三人の眠る顔に微笑みながら、ナビの指示に従って車を走らせる。
ドリンクホルダーに手を伸ばせば、キャップを外した状態で渡されるそれ。
「ありがとう。」
『どういたしまして。…今日晴れて良かったな。』
「そうだね。」
車内には申し訳程度に掛かったBGMと穏やかな空気感。
『…ちゃんと飯食ってた？』
「…うん。」
『そっか。じゃあ、痩せたように見えたのは気の所為？』
「…今日は浮腫んでないから」
『ははっ！そういうことにしとくよ。…、美味いものいっぱい食おうな。』
「うん。」
彼がどんな顔をしてるか分からない。でも、心配してくれていることは痛いほど分かる。
[間もなく、目的地です。]
ナビの声で後部座席のメンバーを起こすと、あっという間に騒がしくなる。
車を降り、吸い込んだ澄んだ空気は私のテンションを上げていた。
**
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1428人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のん(プロフ) - とても面白い小説ではまってしまいました。主人公の気持ちがとても切なく、共感できる素敵な主人公だなと思います。どんな結果でも幸せになってほしい！これからも応援してます。 (3月15日 16時) (
レス) id: d13a90d6ad (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - とても面白かったです。思いあってるのにすれ違ってる2人も、彼女のことを考えてくれる目黒くんも、立場を考えると切なくなります。深澤担ですが主人公がしっかりとしてるのに、段階を踏んで目黒くんの優しさに触れていく過程が素敵でした。続き楽しみにしてます。 (3月15日 4時) (レス) @page38 id: 3a34fd6c9d (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます！続きがとても楽しみです！ (3月13日 22時) (レス) @page38 id: 8619ea3777 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お豆腐屋さん | 作成日時：2024年3月3日 21時
