とある日の手記 * ページ30
20██年 9月2█日
好奇心なのか何なのか。
どうしてか君の危うさに目が離せなくて、ここまで着いて来てしまった。
君は知らない間にふらっとどこかへ消えて、居なくなってしまいそうな危うさがある。
別に儚そうな雰囲気を纏っている訳ではない。
病弱でもないし、薄幸そうでもないのだが……別の世界に片足を突っ込んでいるような、常人とは違う何かを感じる。
ただ……なんとなく、“危うい”と、そう思うのだ。
実際、その勘は当たりだった。
君はあの踏切を越えて、居なくなってしまった。
僕はその時、踏切を渡ってはいない。
まるでその先が……人の世ではない、別の空間への道のように感じたから、本能的に恐怖を覚えて、その場から動けなかったのだ。
でも君は、怖いものなんて何もない、と言わんばかりに歩みを進めて行って、僕はそれを立ち尽くして見詰めていた。
遂にその後ろ姿が見えなくなって。
とうとう帰って来なかった。
だから日を改めて、君を迎えに行ったのだ。
こんな事になるくらいなら、君なんかと関わるんじゃなかった。
そう言ってやりたいのだが、どうしてか本音に成り得ない。
今思えば、初めて会った時から魅了されているのに近い状態だったのかもしれない。
だってここまで来た癖に、何故君にこんなにも惹かれているのか、未だに答えが出せないのだから。
ただ本当に、目が離せないのだ。
それだけなのに、ここまで着いて来てしまった。
それで、結局、君は帰る事ができない。
多分、僕ももう帰れない。
これを読んでいる貴方も、もう帰れないと思います。
ご愁傷様です。
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
miko(プロフ) - 通りすがりの人Aさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…!タイプと言って頂けて光栄です。考察までしてくださって嬉しい限りです!お心遣いもありがとうございます。次回作も楽しんで頂けると幸いです。 (5月9日 18時) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - 「大人になるということ」、個人的な考察として富士樹海のことなのかなぁと勝手に考察していました。樹海のまた別の特長も相まって人生に迷子になっちゃったんだろうなぁと、考察のしがいがありました。次回作も読ませていただきます。 (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - コメント失礼します。話の展開や言葉遣い、細部に至るまでのこだわり、本当にタイプの文に久しぶりに出会えて大満足です。素敵な作品ありがとうございます。→(字数上次になりますが次の文は考察含みますので作品様の方針にそぐわない場合消していただいて構いません) (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
miko(プロフ) - 富司純河さん» 励みになるお言葉をありがとうございます…! (4月30日 2時) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
富司純河(プロフ) - 続編お待ちしております。 (4月29日 10時) (レス) @page49 id: ecd0918c08 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miko | 作成日時:2023年5月10日 3時