pink ページ12
助手席に座る彼女は、恋人ではない。
深夜2時半。週に2度、彼女と会うこの時間がくる。
ヒットソングが流れるラジオに
あ、この曲好きなんだよね。
だいちゃんの声に合いそう。と
こちらを見ることはなく、乾いた声で笑った。
____ねえ、抱いていい?抱きたい、Aの事。
彼女が好きだ。誰よりも、何よりも。
執着心は薄い方だと思っていたけど、違ったようで
彼女に近づく影があればとことん遠ざけたし
だけど、それは己に都合のいいように仕向けているだけ。
アイドルという職業。俺には天職だと思う。
もちろん簡単ではなかった。
今の仲間や仕事や場所を手に入れるまで、
何十年も下積みを積んで、血反吐を吐く思いで耐えてきた。
辛い、苦しい、逃げたい。
そんな時、いつも幼馴染みの彼女だけは
大ちゃん、大丈夫だよ。と
俺の名前を呼び続けて、隣にいてくれた。
あの言葉を告げた夜、彼女はどう思ったのか。
ただの幼馴染みに、抱きたいと言われて
気持ち悪いと、軽蔑したいと、思ったのだろうか。
だとしたら、その言葉に何も言わず
悲しい笑みを浮かべて頷いた彼女は
……きっと、素晴らしい大女優になれると思う。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時