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「順番に撮影お願いしまーす」
9人揃っての仕事。雑誌物になると、大抵3人ずつの撮影にわかれる。まず向かったのは、佐久間、宮舘、向井の3人。
その3人に付き添いで出ていった彼女の背中を見ながら、少し静かになった楽屋でため息をついた。
「…ふっかさぁ、前からだけどバレバレ」
「照まで!?」
「ほんっとおもろいな、お前」
「なべもかよ!うるせー!」
そりゃあ俺だって、クールにキメたいよ?そんな俺を見て、かっこいいなんて思って欲しいし。
「なーんでなの…」
思わず顔を伏せた。そんな俺の肩を黙って摩るめめの優しさも、今は痛いし。
『あれ…深澤さん?』
そんなことをしてると、ガチャっと開いたドアに、俺を呼ぶ彼女の声。でもどうしても、情けない顔見られたくなくて上げられなくて。
「っあー。俺、ちょっと自販機」
「俺もぉ」
『私が行きますよ』
「いや、いいよ。阿部は?」
「照と翔太が行くなら、俺も行こっかなあ」
「俺とラウールも、トイレ行ってきます」
残留組がいきなりゾロゾロと楽屋を出始める。へ?と間抜けな声を出すと、小声で頑張れよと言われて。
「アイツら…」
『みんな行っちゃいましたね』
謎のアシストのおかげで、今二人きりになったわけだけど。
(…やべー、何話そ)
横目で彼女を見ると、いつも通り可愛いな、しか出てこない。今日はメガネなんだ。おそろいじゃん?とか、少し大きめのパーカー着てんのも似合ってんな、とか。
『あの、どうかしました?』
まあ、バレバレだったわけだけど。
「あ、いや、べつに?」
『ふふ、なんですかその顔』
思わず視線を泳がせると口元を隠しながらくすくす笑う。あー、そんなの可愛すぎて好きに決まってんじゃん。
……佐久間には、いつも見せてんのかな。
蘇るふたりの距離感。嫉妬とかしないと思ってたけど、さすがに俺も、余裕なくなるってゆーか。
『…深澤さん?』
気づけば立ち上がって彼女の前に立ち、その手を掴んでいた。
「…ね、佐久間のことすきなの?」
『へ?佐久間さん?』
キョトンとした顔。鈍感なのも可愛いけどさあ。
『好きですよ、優しいし、いい人ですし。9人のこと好きです』
「ちっがぁう!そうじゃなくて!」
頭の上にハテナを浮かべて、ほんっと恋愛に興味無いというか。…そういうとこも好きなんだけどね。
「アイツの事彼氏にしたいとか、ちゅーしたいとか、思う?」
直球で聞くと赤くなったその頬。理解したようで、あたふたし出した。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時