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そこから彼らの人気ぶりに火がつくのは遅くなくて
テレビで見ない日は無いほど
…特にその中でも彼は、一際バラエティやドラマに引っ張りだこで
関わる時間は数十分のメイク時間だけになった。
それも毎日な訳でもない。
あんな数年前のこと、覚えているわけもない。
この恋を実らせる気もなければ、可能性なんか最早ない訳で。
阿部さんを送りだして
空っぽになったメイク室、1人ため息をついた。
『…でも、目黒くんの事好きだなぁ、』
「何が?」
「………ッッえ、」
「すません、スマホ…俺の忘れてっちゃって」
テーブルの上を指さす方を見ると
確かに彼の私物と思われるスマホ。
メイクが終わって控え室に戻った後、
無いことに気付いて取りに来たらしい。
基本的に本人たちの楽屋以外は
ドアは解放する決まりになっているので
入ってきたことに気付かないのもおかしくは無い。
「で、何が好きなんですか?」
『……へ?』
「ね、言ってよ、さっきみたいに」
ドア付近にたっていた彼が、
ゆっくりと扉を閉めて、鍵をかけた。
ジリジリと近づく距離に
なんでこうなってるんだっけ…あれ、
目黒くんって私には敬語じゃなかったっけ、
そんな事を考えて頭がパンクしそうになった頃には
私の両横の壁に、逃がすまいと添えられた彼の長い腕。
獲物を捉えたみたいな、そんな彼の目に
ひゅっ、と喉がなる感覚がした。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時