満開桜と咲かない恋 (ページ14)

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ひさしぶりページ14

「ここは、こういうステップで」
『こ、こう？』
「お！いいね！素質あるよ」
『ええ…そうかな』

あの競技決めから早1週間。
既に各クラスが体育祭への練習を始めていて、
私達のブロックも放課後はダンス練習へと移った。
3学年、各ブロックが合同で行う練習。
ラウールくんは夏の大会もあるのに、部活までの時間を割いて教えてくれる。
踊ることなら負けたくないと率先してフォーメーションや振付まで考えたのは彼だ。たった1週間の期間で、考えつく才能が凄い。

「あ！めめー！」
『っ』

そんな体育館での練習中。ラウールくんが私の背後に向けて放ったその言葉に、胸が高鳴る。

体育館は3分割されそれぞれのブロックが練習に使う。私たちより遅れてきた彼のブロックが練習を開始するようで。
ラウールくんの声に反応した彼が、こちらへ走って向かってきた。

(…ジャージ姿もかっこいい)

腰に上着を巻き付け、袖は捲りあげタンクトップのようになっている。細いのにしっかりと筋肉が着いた腕に、男の子なんだな、なんて考えて。

「よ、ラウール達早いな」
「まあね！めめ達はどんなの踊るの？」
「あー、内緒」
「えー！ケチ」
「Aも、久しぶり」
『あっ、うん、久しぶり？』
「あはは、なんで他人行儀なの」

いきなり話しかけられて思わずなれない返事をすると、あの時のように優しく撫でられた頭。
それを見ていた彼のブロックの後輩の女の子が、小さく黄色い悲鳴をあげたのが聞こえた。

『ちょ、蓮くん』
「ん？」
『…みんな見てるから』
「何を？」

当の本人はこういう時鈍感なのか、頭に手を置いたままポカンとしている。…嬉しいけど、恥ずかしいし。

「めめ〜良くないぞ」
「んだよ、ラウール」
「ほんと鈍感さんだよねえ…ごめんね、Aちゃん」
『あ、いや、大丈夫』
「え、なんか俺まずいことした？わりぃ」

その温もりが離れて、ラウールくんとの他愛もない話が始まる。少し経って、向こう側から目黒ー！と呼ぶ声がする。

「呼ばれてるわ、じゃ」
「うん、頑張ろうねえ」
「Aも頑張って」
『う、うん』

爽やかに走って去っていく背中を見ていると、ちょんちょんとラウールくんに肩を叩かれた。

「仲良いんだね」
『委員会、同じだから』
「めめはそれだけじゃないと思うけどなー…そっかあ」
『ごめん、何か言った？』
「んーん！再開しよっか！」

どこかご機嫌なラウールくんを不思議に思いつつも、もう一度彼の姿を見つめた後、練習へと戻った。