満開桜と咲かない恋 (ページ16)

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連絡先ページ16

「中庭にいたの気付いたんだけど、話しかけられて」
『…見てたよ、仲良さそうだね、皆と。』

振り返ることなく、答えた。…ダメだ、声が震える。

「…A？」
『私用事あるから、行かないと』
「ダメ、こっち見て」

通り抜けようとすると、いとも簡単に肩を掴まれて目が合う。
じっと真っ直ぐ見つめる瞳が、今は少し苦手だ。
気持ちまで見透かされそうで。

「なんか、元気ない」
『そんなことないよ』
「嘘。目合わない」
『それは、』
「それは？何で？」
『…ち、かい、から』

両腕をついて、私を逃すまいと見つめる。
昼休みも終わりがけ。人も居ないからいいものの、見られたらどう思われるんだろう。

「…ほんとに、元気？」
『うん、元気だから、ちょっとだけ離れて…』
「そんな嫌？」
『…は、恥ずかしいの』

嫌なわけない。だけど相変わらず距離感がおかしいというか。
小さい声で答えた私を見て、ふっと満足気に笑ったあと
ごめんねと言いながら離れてくれた。

「あまりに早足で行っちゃうんだもん。なんか怒ってんのかと思った」
『怒るわけないよ、蓮くんに』
「うん、安心した。その呼び方も久々に聞いたし」
『呼び方？』
「そ。俺の事蓮くんって呼ぶの、Aだけだから」

……え？今なんて？

「わり。顔見たかっただけ。あとコレ。んじゃ」

私の掌にぐしゃっと小さいメモ用紙を握らせたかと思ったら、
ヒラヒラ手を振って去っていった。
気付けばもう随分向こうまで行っちゃって。

確かに、ラウールくんもめめって言ってるし、周りの女の子たちも目黒くんか、めめくんって言ってる。……私、だけ。

淡い期待を持ちながら、渡されたメモをゆっくり開くと

＜連絡。まってんね＞

その男らしい文字の下に、電話番号が書かれていた。

『〜〜〜〜っ！！』

思わず嬉しさで、顔を覆う。落ちてしまったお弁当なんて構ってられない。
委員会の時には、勇気が出なくて聞けずに後悔していた。

「いた！って…何この状況」
「俺も、理解し難いかも」

パタパタと駆けてきた2人。ぽかんとした顔で私を見つめた。

「どっか痛い？具合悪いの？」
『どちらかと言うと逆なの、嬉しいの』
「…うん、やっぱ俺にはわかんない」

さっきまでモヤモヤしてたのが嘘みたい。
気付かれないようにそっとポケットにしまって、
2人の腕を引っ張りながら、教室に戻った。

「なによ、ほんと」
「わかんない、パニックパニック」

ごめん、2人には内緒だけど。今最高に、幸せな気持ちなの。