満開桜と咲かない恋 (ページ17)

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電話ページ17

耳元で鳴るコール音。時間は21時を回ったころ。
帰ってきて掛けようとして辞めて、
ご飯を食べてから掛けようとして辞めて、
お風呂に入ってから掛けようとして辞めて、
結局…こんな時間になってしまった。

キリがないと、思い切って押した電話のマーク。

(なんでLINEじゃなくて、電話番号なんだろう)

そう思ったのは、5限が終わった時の事だった。
ラウールくんと琴葉ちゃんは、あの後も散々様子がおかしいと言ってきたけど、何も無いと通すしかなくて。

《はい、目黒です》

そんなこと思ってる内に聞こえた声。
電話越しでいつもより少し低く感じる。

『えっと…Aです』
《あ、A？やっと掛けてくれた》
『へ？』
《いつまで経っても掛かってこないから、嫌だったのかと思った》

よかったと笑う声が聞こえて、また胸が締め付けられた。
…他の女の子にも、こんなふうに電話するのかな。

『蓮くん』
《ん？》
『LINEの方が良かったんじゃない？い、嫌とかじゃなくて！珍しいっていうか』

ずっと引っかかっていた、そんな疑問を投げかけた。

《確かにLINEでも良かったんだけどさ》
『うん』
《やっぱ直接、声聞きたいじゃん。》

…蓮くんは私を振り回すのが上手だ。

『そっか、そうだよね、うん』
《何その声、変なの》

びっくりした拍子で裏返った声。くすくす笑う蓮くんが可愛くて、恥ずかしいよりその気持ちが勝ってしまった。

《これで電話番号から追加もできるでしょ、LINE》
『…あ、たしかに』
《後でしていい？ていうか、勝手にしちゃうけど》

こんな強引な所もドキッとしてしまう。

『体育祭だね、頑張ろうね』
《Aの事ちゃんと見とく》
『やっやめてよ、蓮くんとは違うんだし』
《俺？》
『…蓮くんは、人気者だから色んな子がきっと見てるよ』
《んー…それならAに見られてる方が頑張れるわ》

ブロック違うから勝たせてもらうけど、と悪戯げに笑った。
蓮くんは男女関係なく友達思いだから勘違いだって分かってるけど、どうしても期待してしまう。

《遅いのにありがと》
『ううん、私こそありがとう』
《また明後日。おやすみ》
『おやすみなさい』

少し時間を開けて切られた通話。
……好きな人にお休みって言えるの、こんなに嬉しいんだ。
ポンとすぐ明るくなった画面。
通知には【蓮さんが友達追加されました】の文字。
トークを開くと、ゆるキャラのおやすみスタンプ。

スタンプを返して、布団に潜る。…体育祭、苦手だけど頑張れそう。