満開桜と咲かない恋 (ページ25)

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寄り道ページ25

「負けたのは悔しかったな」
『でも2位でしょ？』
「3ブロックしかないし。取るなら優勝しかないから」
『…負けず嫌いだ』
「うん、しかも相当ね」

電車で数駅。最寄りからは家まで15分ほど。
そんな少しの時間でも、蓮くんとの話題は耐えなくて。

「へえ、こんな公園あるんだ」
『ちっちゃい時はよく来たよ』
「そうなんだ。俺、ブランコ好きなんだよね」
『案外野生児だよね、蓮くん』

時間が経って、随分古びてしまった公園。
だけど私は、案外この空気感は嫌いじゃなくて。

「今も来たりするの？」
『たまに？ちょっと寄り道したいなーって時は』
「そっか。今日は？」
『ん？』
「今日は、寄り道したい気分じゃないの？」

どこかワクワクしたような瞳を向けられて、
その後に彼が見たのは、空いた2つのブランコ。

『…ふふ、行く？』
「え、いいの」
『そんな顔で見られたら、ね？』
「やべ、顔に出てた？」

でも嬉しい、と足早に向かった。
急がなくても埋まることは無いのに
手を掴まれて、早く行こうと連れていかれる。

「おー、最高」
『久しぶりに乗ったかも』
「俺も。いいね、やっぱり」

上手に漕いでる蓮くんのギャップに笑ってしまう。
笑わないでよ、としばらく漕いでから降りた蓮くんは
座ったままの私の真後ろにたった。

『どうしたの？』
「ん？押してあげようとおもって」
『え、いいよ』
「いーからいーから」

優しく押されて、フワッと上がった足。
……子どもの頃見てたのって、こんな景色だったっけ。
街の向こうの方は紫色に染まり出して
日が落ちるのも随分遅くなった。

『蓮くん、高い、ストップ』
「あは、怖いの？」
『…なんか昔より怖いかも』

徐々にスピードが落ちて
前から鎖を掴むように蓮くんが止めてくれた。
何だか見下ろされると、ドキドキする。

「はい、おわり」
『あ、ありがとう』
「…帰ろっか」

暗くなると危ないし、ってそういう紳士なところも好き。
あっという間に家の前に着いてしまって
残念ながら、バイバイの時間。

『ありがとう、またね』
「うん。ちゃんと休んで」
『蓮くんも』
「…ん、また」

バッグを肩にかけて、また駅に向かって歩き出した。
…わざわざ送ってくれなくても良かったのにって思うけど
一緒にいれたのは正直嬉しくて。

しばらくその後ろ姿を見ていると、
パッと振り返って、長い腕を左右に振った。
それを見て、私も振り返す。

『…あ、ジャージ』

……もう少しだけ、預かっててもいいかな。