満開桜と咲かない恋 (ページ26)

今日:30 hit、昨日:42 hit、合計:25,079 hit

気になるページ26

(R side)

なんとなく気になる。それは出会った時からずっと。

駅までの道をまた戻りながら
今日の出来事を思い出した。
…もし、当たりどころが悪かったら。

「…A、A！」

あんなに名前を呼んでも一向に目を開けず
腕の中でぐったりする彼女を見た時、
自分の心の中が真っ黒に染まっていくのが分かった。

「蓮くん、違うの、その子がぶつかってきて」
「……何言ってんの？アンタ」

そんな俺に怯えた顔をしたそのクラスメイトを押しのけて
彼女を保健室に運んだ。勝手に、身体が動いた。

彼女は、稀に見るいい子だ。
委員会の仕事もキッチリこなす。
先生達への挨拶も欠かさない。
クラスメイトにも好かれていて、頼りにされていて。
何より、毎日いつも頑張ってる。
自分のクラスに向かう時に廊下から見える、
彼女の後ろ姿を追う度に知る姿はたくさんあって。
たまにドジしてるの見ると、思わず笑っちゃうけど。

泣いて欲しくない。笑ってて欲しい。

「…なんでそんなふうに思うんだろ」

理由はわからない。
彼女を見ると、何故かそんな気持ちになる。

しばらく歩いているとすっかり空は暗くなって
少し足早に駆け出した。

「めめってさぁ、わかりやすいね」
「何が？」
「ううん？俺はそういうトコ好きだよ〜」

今日、彼女の弁当を受け取りたいとラウールに会った時
そんなことを言われた。理由を聞いても結局教えてくれなくて。

自分でいつか気付くよって…なんの話だよ、ホント。

いつの間にか駅について、改札を抜けた。

(毎朝ここ、使ってんのか)

Aがいつも見てる風景だって思うと
なぜだか目に、耳に、焼けつけたくなって。
いつもはすぐ取り出すイヤホンを今日はしまったまま
3分後に来る電車を待った。

━━━━━━━━━━━━━━━
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「ただいま」

そう言っても誰もいない。
仕事で帰ってないだけだけど。

【あっためて食べてね、体育祭お疲れ様】

母の時で書かれた書き置き。
丁寧にラップされた夕飯を、レンジに入れる。
広い静かなリビング。1人腰かけていただきます、と
小さく手を合わせて呟いた時。

【今日はありがとう、いっぱい寝てね】

さっきまで一緒にいた彼女から。

続けて送られてきた変なザリガニのスタンプに
声を出して笑ってしまう。

【何ソレ】
【蓮くんが好きそうだと思って買っちゃった】
【面白いことするね】
【うん、笑った？】

夕飯の時間は好きじゃない。でも今日は、いつもより楽しい。