図書室 ページ7
行きなれた図書室。
ガラッと扉を開けるとまだ誰も来て無いらしく、お気に入りのいつもの席に腰かけた。窓を開けると、風が入り込んで気持ちいい。
『…あったかい』
4月とはいえ、随分と暖かくなった。
制服のジャケットを脱いで、背もたれにかける。
図書室の机や椅子は、教室と違って横長で、よく並んであべちゃんと勉強したなあ、と思い出す。
『新しい学校、楽しいかな』
今朝もメールで、2人で登校している様子が送られてきた。最寄り駅まで一緒に行くなんて、まるでカップルみたいでおかしい。
顔を伏せて、目を閉じる。暖かい光と風が気持ちよくて
…少しだけ。誰かが来るまで、ちょっとだけ寝ようかな。
ゆっくり意識が遠のいた。
「…え、ねえ、大丈夫？」
きっと、眠ってから数分の出来事だろう。優しく肩を叩かれて、目をゆっくり開いた。…やばい、ほんとに寝ちゃった。
『す、みません、寝ちゃって』
体を起こして、声をかけられた方へ顔を向ける。
「寝てただけか。なら良かった。」
フッと笑う顔。聞き覚えのある声。嘘、夢じゃないよね？
…だって目の前には、今朝、目が、あった人。
声も出せないまま思わず立ち上がると、おお、と少し驚いた様子。
「ごめん、驚かせた？」
『あ、いや、えっと』
「図書委員の打ち合わせ、ここだよね？」
トントン、と机を指で叩いた。
そんな仕草でさえも、なんだかすごいかっこいい。
『多分、』
「じゃあここで待ってよっと」
答えながら腰掛けると、その横に腰掛けた彼。そのタイミングで他にも人が入ってきて、耳打ちで小さく「場所合ってたみたいだね」と囁いた。
…神様、本当にいるなら心から感謝します。
委員会の仕事内容を簡単に説明されて直ぐに委員会の集まりは終わった。ガタガタと立ち上がり、すぐに帰る他の人達。
「あ。３組ってことは、俺とペアだ」
『…へ？』
「俺、4組」
もらった資料の端にクラスと名前を書いていると、その様子を知らぬ間に見られていた様で。
「A…へー、よろしくね」
『よっ、よろしくです』
「あは、なんで敬語？タメじゃん」
頬杖をつきながらまっすぐ私の目を見る。
「しかも朝、目合った子だよね」
覗き込まれるように顔を見られて思わず後ずさる。距離感、距離感おかしくないですか。
「俺、目黒蓮。好きに呼んで」
『…れん、くん』
「ん」
2年越しに知った彼の名前は、主人公みたいにキラキラしてて。委員会まで同じって、多分、奇跡だと思う。
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月13日 9時
