満開桜と咲かない恋 (ページ9)

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はじめてのページ9

『じゃあ…お願いします』
「うっす」

あっという間に授業は終わり、今日は初めての委員会。
昨日の説明会の時にしたじゃんけんの結果、1週目の担当は私たちになった。…目黒くん、じゃんけん弱いのかな。

『仕事は…基本的に貸出の受付と、棚の整理と、簡単な掃除かな』
「へー…意外とそんなもんなんだ」
『基本、人も来ないしね』

監督の先生すら来ない、2人だけの空間。放課後、2時間だけのこの時間は…私にとっては凄く特別なもの。

「せっかくなら自己紹介する？」
『自己紹介？』
「名前しか知らないじゃん、俺たち」

隣で暇そうにユラユラ椅子を揺らしながら、頭の上で手を組む彼。確かに、言う通りかも。

「じゃ、趣味は？」
『趣味、かあ』
「俺はザリガニ釣り。サッカーも好き」
『ザ…ザリガニ？』
「した事ない？糸でザリガニ釣んの」

こーやってやんだけど、と真剣にジェスチャーで伝えてくれるけど、正直全くわかんなくて。

『全然わかんない』
「…うそ。俺、マヌケ？今」
『うん、マヌケかも』
「やば、はっず。忘れて」

あまりに必死だから私も笑っちゃって、それを見て蓮くんも笑う。

「で、Aは？」
『んー、本は好き。映画観るのとか、音楽聴くとか』
「いいね。やっぱ音楽好きなんだ」
『やっぱ？そんな感じするかな』
「いや、よく図書室いるなって思ってたから」

バチッと視線があって思わず動きが止まる。…思ってた、ってことは…どこかで見てたって事？

「俺、サッカー部の仮部員。まあ必要な時だけの手伝い的な感じなんだけど。だからよくグラウンドいんだけどさ。」

思い出すように天井を見つめながら話す彼を、じっと見つめる。

「1年生の夏前くらいかな。ボール、こっちまで飛ばした時があって。そんときにイヤホン付けながら、1人で窓際に座ってんの見たことある」

あべちゃんが来るまでの時間、よく1人で待つことがあった。その時はイヤホンをつけて、周りの音を閉ざして、音楽を聴いて…そんな空間が好きだったっけ。

「顔、ぼんやりして忘れてたけど、うん。Aだわ。」

私の顔を覗き込むようにまた見つめて、ふわっと笑った。笑うと下がる目尻は幼いけど、やっぱり凄く大人びてる。

『な、んか…恥ずかしい、忘れて』
「あ、俺の真似した」
『真似じゃないもん』
「ふは、焦りすぎ」

2年前のこと、覚えてくれてたって事？しかも私が知らないところで、みられてたんだ。
嬉しくて恥ずかしくって、思わず目の前の本で顔を隠した。